Aさんが販売店から買った自動車に、次のような問題点が引渡しを受けたあと発見された場合、Aさんは自動車を販売店に引取ってもらい、代金の返還を受けられるでしょうか。また、損害賠償を請求することができるでしょうか。
[設問1]
Aさんが、保証付きで購入した自動車が、1ヶ月目でエンジンが止まるようになりました。大きな事故につながることも考えられるので車両交換してほしいのですが。
エンジンが止まることについては、通常保証の内容に含まれていると思われます。保証の対象項目であり保証期間内であれば、販売された自動車としての適切な品質となるように修理(無償)すれば良いことです。修理により正常な状態に戻れば車両交換までは主張できません。
[設問2]
全ての不具合を保証すると言う約束(口頭)で購入したのに約束を守ってくれません。
「口頭」による約束であっても、保証付きの販売に変わりありません。したがって、Aさんの要求に対し、保証の内容に従って処理されるべきです。
なお、口頭保証は後日のトラブルの元なので、保証内容などを明示した保証書を必ず発行してもらうべきです。
[設問3]
購入して2ヶ月半頃からエンジンの掛りが悪くなりました。販売店は、修理に応じてはくれますが、保証期間があと半月しかありません。保証期間を延長してもらうことはできないのですか。
保証期間中に発生した保証対象の不具合については、保証の残期間とは関係なく保証内容の範囲内において販売店に無償修理の責任があります。
「修理完了時が保証期間を経過しているか、していないか」については問題ではありません。したがって、本設問は保証期間の延長とは直接関係しません。
<基礎知識>
-保証付きの販売-
売買の対象とされた特定の物に発見された、取引きの時には分からなかった傷や欠陥のことを「隠れた瑕疵」といいます。
ところで、取引きの対象物に代替性のある場合なら、引渡されたものに隠れた瑕疵が発見されたときには、買主は代りの別の物の引渡しを売主に要求すれば良いのですが、対象物が初めから特定の物である場合には、買主は売主に交換を要求して最初の注文どおりの物を手に入れることができませんので、結局、損害賠償か契約の解除によって事態を解決するしか方法はありません(民法570
条、566 条)。そして、中古自動車は、新車とは異なり一物一価であることから、その取引きにおいては原則として代替性はありませんので、売買された中古自動車に隠れた瑕疵が発見された場合には、この方法によって問題を処理することになります。
-契約解除が認められる場合-
保証付きの販売の場合には、保証書の記載事項に基づき、保証期間中、対象となる不具合について無償修理を行うことが必要です。保証期間中に生じた保証対象の不具合は保証期間中にきちんと修理すべきですが、たとえ保証期間が経過しても販売店はその不具合を修理する責任を負います。それは保証期間の延長の問題とは関係ありません。
なお、修理による性能の回復は、新車のそれではなく中古自動車として、その自動車のそれまでの使用経過からみて、通常有するものとされる性能の程度になります。
どうしても修理できず、その不具合のものでは自動車を安全に運行の用に供することができないときは、売買契約を解除できることになります。
また、販売店は、「保証付き」の中古自動車を販売する場合には、自動車公正競争規約に基づき保証書を発行するとともに、記載事項を買主に説明し、後でトラブルなどを防止しなくてはいけません。
なお、保証範囲外の不具合が生じることも考えられますが、この場合であっても、隠れた瑕疵に該当する不具合であるときには、民法570 条の瑕疵担保責任を主張できます。
-「保証(新車)」の継承-
新車の「保証書」においては、「保証期間の残っている自動車を入手した場合は、系列の販売店で定められた整備点検を受ければ、残りの保証期間を継承することができる」と記載されています(詳しくは、保証書を確認すること)。
中古自動車の販売においては、ほとんどの販売店が自店の保証書を発行する「保証付きの販売」を実施していますが、場合によってはこのような「保証期間の継承」を活用できるケースも考えられます。
また、販売業者の保証を付けずに、新車時から付いていたメーカー保証(製造業者の保証)をつける場合は、保証継承のための定期点検整備費用を販売価格に含めています。
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